分子生物物理学研究室における研究の目標
分子生物物理学研究室では,タンパク質の立体構造に内在する動的特性がもつ機能上の役割を解明する研究を進めています.
タンパク質の立体構造研究は,タンパク質結晶構造解析が初めて成功してからすでに50年以上の歴史をもちます.放射光利用など技術的な進歩により,タンパク質立体構造決定は猛烈な勢いで進められています.すでにタンパク質立体構造データベース (PDB)には6万件を超えるデータが登録されており,今なお年間7千件を超えるデータの登録が進んでいます.膨大に蓄積されたタンパク質立体構造データは,計算機を使ったタンパク質立体構造予測の高精度化などを可能とし,タンパク質科学におけるタンパク質立体構造研究をあり方を変化させつつあります.
タンパク質立体構造データのほとんどは,結晶構造解析により得られています.結晶構造は,高い分解能構造を与える一方で,溶液中で本来タンパク質構造が持つ「構造揺らぎ」の情報を失っています.このためタンパク質の高分解能構造が明らかになっても,その機能上の役割をうまく説明できないことも多くあります.
NMRを用いることで溶液中にあるタンパク質の立体構造を得ることも可能です.しかし,従来のNMR構造解析技術で得られる立体構造は,溶液中での平均構造を与えるものであり,得られる立体構造からだけでは,タンパク質の溶液中でのダイナミックな動きと機能制御との関係を正確に把握することはできません.また,タンパク質の機能を議論するに耐える精度での立体構造決定は,20
kDa程度までの小さなタンパク質に限られます.この計測上の制約(分子量限界)があるために,既存の技術を利用するのみではタンパク質科学研究としての幅を広げることが困難です.
本研究室では,主にNMRを用いて結晶構造解析では失われたタンパク質構造に内在する動的構造特性の解析を通して,溶液中にあるタンパク質がどのように「構造揺らぎ」を利用して機能を制御するかを解明する研究を目指しています.タンパク質構造に内在する構造揺らぎは,原子の熱運動による「ノイズ」ではなく,機能を制御する働きを持った「ロコモーション」であると考えます.
タンパク質の精密な結晶構造にもとづいて,その機能との関係を議論するなかで構築されてきた「タンパク質の構造-機能相関」という概念は,タンパク質科学における重要なパラダイムです.私たちは,タンパク質の動的構造特性と機能との相関を解析する研究をを通して,「タンパク質構造揺らぎ-機能相関」というもう一つのパラダイムの確立を目的とします.
分子生物物理学研究室での教育・研究環境
研究室にはタンパク質研究を専門とするスタッフがそろっています.それぞれのスタッフの専門は異なりますが,さまざまな視点から相互に意見を出し合いながら特徴のある研究を進めています.研究室に配属された学生は,各自の興味に応じてテーマを選び,各スタッフの指導の下に研究を進めます.
最新鋭の700MHz NMR (Bruker Avance700: 4-channel, cyrogenic probe装備)を使ったタンパク質の構造研究ができる環境が整備されています.また,タンパク質試料調製や分析に必要な,CD分光器,UV,蛍光分光光度計,HPLCや遺伝子操作に必要なPCR,DNAシークエンサーなども自由に使えます.タンパク質のNMRスペクトル解析に用いる専用のワークステーションや,タンパク質立体構造計算用のクラスター計算機も整備されており,最先端のタンパク質研究を進める上で必要とな設備は全てそろっています.
研究室での活動を通して,各学生には最低限以下のような技術・能力が習得できるような指導を行います.
● タンパク質試料の調製技術.遺伝子操作によるタンパク質改変技術
● タンパク質研究に必要となる基本的な機器を利用する技術
● 実験結果から,新たな知見を引き出し研究成果としてまとめ発表する能力
● 関連する研究テーマの学術論文を読み,その内容をまとめる能力
学生は,研究室のセミナーで定期的に研究成果報告,文献紹介を行います.大学院に進学した学生には,研究の進捗に応じて国内外の学会,研究会等で成果発表する機会を与えています.
新着情報
2011.09.27-28
研究室夏期ゼミで,蒜山高原で合宿しました.
2011.09.26
首都師範大学(中国・北京)からの留学生,徐さんが来日しました.
2011.09.25
D3 中野君が日本生化学会大会で鈴木紘一賞を受賞しました.
20011.09.08-09
数理分子生命理学専攻の夏期合宿が開催されました.
更新履歴
2011.10.01
研究室HP更新しました.
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