2.化学振動反応の光デザイン

2−1.化学振動反応

 化学振動反応とは、化学反応においてある物質の濃度が時間的に振動したり、空間的に模様が生じたりする現象をいいます。最もよく知られている反応としては、Belousov-Zhabotinsky反応(BZ反応)があります。これは、フェロインという鉄イオンを含む金属錯体の酸化(Fe3+)と還元(Fe2+)が周期的に変化する反応です。高校では酸化反応と還元反応は同時に起こると学びますが、BZ反応では酸化剤と還元剤が一緒に入っている溶液中で酸化反応と還元反応が交互に繰り返し起こります。ここで溶液のフェロインの還元状態の色は赤色で酸化状態は青色なので、青と赤が周期的に変化する現象が見られます。またシャーレにこの溶液を薄く入れる(厚さ数ミリ)と青と赤の縞模様が広がる様子が観察されます。

2−2.化学進行波を用いた光ダイオードの研究

 本研究室では、ルテニウム錯体を用いた化学振動反応を研究しています。このルテニウムビピリジン錯体は450nmの光を吸収し励起状態となります。この励起状態で化学振動反応が振動の抑制因子であるBr-を生成することが報告されていることから、光照射によって振動現象を制御することが可能になります。

 

図2−1.光BZ系の実験装置.タコの画像をパソコンで描いて、プロジェクターを通して投影、反応場に照射すると、タコの画像の形に化学波が型とられる.

 

 図2−2は鏡像の光ギャップを作り、そこにBZ反応で生じる「化学波」を通過させる実験結果である。光ギャップの照射量の合計は同じであっても、通過できるH-gapとできないL-gapがあります。これはギャップが通過する初期条件の違いによるもので、履歴現象によるものです。L-gapではギャップに突入後、徐々に化学波の速度が低下し照射強度が更に高くなると消滅する。これらをうまく空間的に配置すれば、化学ダイオードや新たな情報伝達パターンを構築することが可能になります。

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図2−2.光BZ系における化学波のギャップ通過。ギャップが深いほど照射強度が高い。H-gapでは化学波(緑色)が通過するが、L-gapではギャップ中で消滅。

 

2−3.光興奮の研究

 BZ系では、光照射によるインヒビターの生成により、化学進行波が消滅することがよく知られている。その一方で、ある光強度では化学進行波を誘起する現象も見つかっているが、独立した話であり、統一性については議論されていません。そこで、双方が発生する実験条件下で、光興奮する原理を実験的に解明し、数値計算することに成功しました(図2−3)。

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図2−3.光照射によるBZ反応の光興奮

 

 研究室の塩田君は、高分子ゲルの振動現象と圧力摂動との関係について研究をしています。江崎君は、化学波の伝播に関する空間応答の研究をしています。もう少ししたら内容を公開します。お楽しみに。

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(担当:江崎、塩田、井倉)