5.皮膚のバリア機能に関する研究

細胞が死滅してできる角質層の厚みは、およそ10-20ミクロンに保たれており、最終的に垢になり次の角質層が生まれるまでのサイクルは1ヶ月弱と言われています。つまり、機能を果たさなくなった角質層は垢として外界に放出されますが、ほぼ同時期に顆粒層の細胞は角質層になる準備をし、その下層では新しい細胞が形成される、「自律的な階層構造」になっています。

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図5−1.表皮の構造(国立がんセンターHPより)

 

 皮膚は、我々を外界と接触する、まさに最後の砦です。しかし、単なる壁の役割だけではなく、内外の刺激を感じる「感覚」を持っています。痛みや温度のような触覚はよく知られていますが、化学刺激に対しても特徴的な応答を示すことが傳田光洋さん(資生堂)達によって報告されています。ここで化学刺激に対する応答速度から2つの作用に分類されます。1つは遅い応答の「ゲノム的作用」で、もう1つは速い応答の「非ゲノム的作用」です。前者は、受容体を介して、細胞膜内での合成を通して応答するため、応答には数日くらいかかります。それに対して後者は、細胞膜に直接作用するため、数分程度で応答します。そこで本研究室では、「非ゲノム的作用」を解明するために、細胞を構成するリン脂質膜と刺激分子との相互作用を調べる研究を資生堂との共同研究で行っています。

 例えば、添加する性ホルモンの種類によって、皮膚のバリア回復が異なることが傳田さん達により報告されています。ここで、ステロイド骨格は同じであるにも関わらず、少しの構造の違いで異なる応答を示すところが注目点です。そこで、各種ステロイド分子を添加したリン脂質単分子膜の表面圧―表面積特性を調べたところ、女性ホルモンであるエストラジオールでは膜圧を高めることを見出し、FTIRNMRによる測定で、これらの分子間相互作用を確認しました。同様に、最近は糖に対する皮膚の応答性について研究を行っています。

 

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図5−2.リン脂質(DMPC)膜とエストラジオールとの相互作用

(担当:古田、塩田)