不老不死に挑戦!

このページのテーマは、これ!
今話題のテロメアとテロメラーゼって?

助手 「博士、不老不死って可能なんですか? ドラゴンボールの神龍は、どうやって人間を不老不死にするんですか?」
博士 「う〜ん、それはマンガの世界じゃからのぉ...」
助手 「じゃあ、老化と遺伝子って関係あるんですか?」
博士 「うむ。 どうやら関係あるらしいんじゃ。」
助手 「ならば、博士なら老化を止められますよね?」
博士 「それは無理じゃ。 まだまだ老化については研究が続いている段階じゃからのぉ。」
助手 「う〜ん、早くしないと...」
博士 「早くしないと何か起こるのかね?」
助手 「わ、私の若さと美貌が...」
博士 「... では、君も老化について研究してみてはどうかね? 君が死ぬまでには老化の止め方が分かるかもしれん。」
助手 「え〜〜〜〜 とりあえず、老化と遺伝子の関係について教えて下さい。」
博士 「よろしい。 まずは、テロメアの話からしよう。」
助手 「カリメロ?」
KARIMERO
博士 「どうやったらそう聞こえるのかね? テロメアじゃ。 テロメアとは、染色体中の1本のDNAの末端にある特殊な領域のことなんじゃ。」
助手 「何が特殊なんですか?」
博士 「うむ。 人間の染色体DNAの末端には、必ずTTAGGGという塩基配列が繰り返されている。 この繰り返し配列により、染色体DNAが末端から壊れていったり、染色体どうしが末端でくっついたりするのを防いでおるんじゃ。」
TELOMERE1
助手 「大切な役割を担っているんですね。 でも、それと老化とどう関係があるのですか?」
博士 「人間の体細胞には細胞分裂できる回数に限界(約50回)があるんじゃが、この回数を決めているのもテロメアなんじゃよ。 実は、テロメアは細胞が分裂するたびに短くなっているんじゃ。」
助手 「えっ! DNAが細胞分裂の度に短くなっていくんですか? なぜなぜ?」
博士 「これには、DNAの複製のメカニズムが大きく関係している。 基礎編の”遺伝子分身の術”の最後で話したように、複製の時にはプライマーと呼ばれる短いRNA断片から5'->3'方向にDNAが合成される。 そして、最終的にはこのRNAプライマーは除去されるんじゃ。 では、このテロメアDNAの複製の時にはどうなると思うかね?」
助手 「あっ! テロメアDNAの3'末端がちゃんと複製されないのでは?」
博士 「その通り! これから図を使って説明していこう。 下の図で、右側がテロメアの末端で、左側からDNA複製が進んでくるとしよう。」
TELOMERE2
「リーディング鎖となる下の鎖では、テロメアDNAは正常に複製できる。 しかしラギング鎖となる上の鎖では、RNAプライマーがテロメアDNAの末端に出来、そこからDNA合成を始めなくてはならない。」
TELOMERE3
「しかも、プライマーが末端にきちん出来るとは限らないし、例えプライマーが末端に出来ても、RNAだから最終的に除去されてしまう。 つまり、少なくともRNAプライマーの長さ分はDNAが短くなってしまうんじゃよ。」
TELOMERE4
助手 「なるほど。 こうしてDNAの複製が起こる度ごとに、テロメアDNAは短くなっていってしまうんですね。」
博士 このテロメアDNAの短縮によって、体細胞は分裂回数をカウントし、その寿命を決めていると考えられているんじゃ。」
助手 「ふ〜ん、このようにしてバクテリアから人間まで、すべての細胞で寿命が決まっているんですか?」
博士 「いいや、違うんじゃよ。 実は、バクテリアには寿命がないんじゃ。」
助手 「え〜! 本当ですか? どうして、どうして?」
博士 「その秘密は、バクテリアのDNAにある。 実は、バクテリアのDNAは環状なんじゃ。 環状であるということは、末端がない。 末端がないから、テロメアもないんじゃよ。」
TELOMERE6
助手 「なるほど。 テロメアがないから寿命もないんですね。」
博士 「そう。 だから、バクテリアは何度でも細胞分裂を繰り返すことが出来るんじゃよ。」
助手 「つまり人間の場合、DNAに末端があるからテロメアが短くなり、細胞の寿命が決まってしまうんですね。 でも、テロメアDNAはただひたすら短くなるだけなんですか? もしそうなら、子孫のテロメアはどんどん短くなっていき、最後は人類滅亡ですよね?」
博士 「ここで登場するのが、テロメラーゼという酵素じゃ。」
助手 「カルボナーラ?」
博士 「そのボケには無理があるぞ。 テロメラーゼは、RNAとタンパク質で構成された酵素なんじゃが、なんと、テロメアを長くしてくれるんじゃよ。」
TELOMERASE1
助手 「テロメラーゼがあれば、何回細胞分裂をしても大丈夫なんですね。」
博士 「しかし、通常の体細胞はテロメラーゼを持ってないんじゃ。 だから、細胞分裂の度にテロメアが短くなる。 ところが、精子や卵を作る生殖細胞では、テロメラーゼが働いているから元のテロメアの長さを維持できる。 したがって子孫の体細胞では、分裂回数のカウントは再び0からスタートするんじゃよ。」
助手 「テロメラーゼを持っているのは、生殖細胞だけなんですか?」
博士 「実は、癌細胞ではテロメラーゼがしっかり働いておるんじゃ。 テロメラーゼのおかげで、分裂回数のカウントがごまかされ、無限に細胞分裂を繰り返してしまうんじゃよ。」
助手 「じゃあ、テロメラーゼはどうやってテロメアの長さを長くするんですか?」
博士 「良い質問じゃ。 先にも述べたように、テロメラーゼは、タンパク質とRNAで構成されている。 実は、テロメラーゼは、自分自身のもつRNAを鋳型にしてテロメアDNAを合成する酵素なんじゃよ。」
助手 「具体的には、どういうことなんですか?」
博士 「つまりテロメラーゼは、テロメア配列TTAGGGと塩基対を形成できるような配列CCCTAAを持っておるんじゃよ。 これを鋳型に、テロメア配列TTAGGGを合成するというわけじゃ。 下のアニメーションを見てもらえば分かるじゃろう。」
TELOMERASE
博士 「ここでひとつ、関連の話題を紹介しよう。 クローンヒツジのドリーを覚えているかね?」
助手 「はい。 体細胞の染色体(遺伝子)から作られたクローンなんですよね?」
博士 「この体細胞を提供したメスの羊は、このときすでに6歳だったらしい。 羊としては決して若くはないのぉ。 上にも書いたが、体細胞ではテロメアの長さは細胞分裂の度にどんどん短くなっていく。 では、6歳の羊の体細胞クローン・ドリーのテロメアはどうなっていたと思うかね?」
助手 「も、もしかして、短かったんですか?」
博士 「うむ。 同じ歳の羊と比べると、明らかに短かったんじゃよ。」
助手 「じゃあ、ドリーは生まれたときからおばあちゃんなんですか?」
博士 「いや、まだそうとは言えない。 確かに、テロメアは老化のメカニズムのひとつと考えられているが、それだけではないんじゃよ。 実際、生物の寿命を延ばす遺伝子も見つかっているからね。 その他、DNAに蓄積した損傷が、老化の原因であるとも考えられているし...」
助手 「ふ〜ん、複雑なんですね。 不老不死もまだまだ夢の世界だなぁ」
博士 「まぁ、ドラゴンボールを7つ集めて神龍にでもお願いしなさい。」
助手 「それは、マンガの世界の話だって言ってるでしょ!」
博士 「そ、それはわしが...」


博士 「最後に一つ、補足じゃ。 DNA七変化 -2-でちょっと触れたが、テロメアのDNAは四重鎖DNA構造をとることが知られておる。 テロメアのDNAにはグアニン(G)が多く、これらのグアニンが下の図のような塩基対を形成するんじゃ。」
TELOMERE5
「え? この四重鎖DNAがテロメアで何をしてるかって? それはまだ明らかではないが、染色体の末端のDNAを安定化して、染色体が端から壊れていくのを防いでいるとも言われておるんじゃ。」


別なページへ移動するために
フレームで御覧の方は、左のメニューを使って移動して下さい。
それ以外の方は、このウィンドウを閉じて、すでに開いている目次から移動して下さい。


Copyright(c) 2001-2004 Naoaki Sakamoto - All rights reserved.
すべてに著作権がありますので、無断転載を禁じます。